AC/DCのアルバム『Highway To Hell』の全曲レビューです。
『Highway To Hell』は、1979年にリリースされたAC/DCのメジャー6作目のアルバムです。『High Voltage』でのデビューから『Powerage』まで連れ添ったプロデューサーのハリー・ヴァンダとジョージ・ヤングが離れ、新しくロバート・マット・ランジを迎え心機一転作られたアルバムです。
『Highway To Hell』では音作りからコーラスワークまでが抜本的に見直され、ブギーやロックンロールの範疇に収まっていたそれまでの楽曲からハードロックに昇華したような印象を受けます。とはいえ、方向性が大きくブレたという訳ではないのが、AC/DCの凄いところ。彼らのコアはそのままで、聴いていて安心感を覚えるワンパターンさです。勿論褒めています。
セールス的にも成功し、アメリカではプラチナディスク(100万枚以上の売上で授与)を7回授与、つまり700万枚を売り上げています。まぁ、AC/DCのアルバムって、アメリカだと殆どプラチナ・ディスク授与されているんですけどね。
(参考:https://www.riaa.com/gold-platinum/?tab_active=default-award&ar=AC%2FDC&ti=#search_section)
ちなみに、ジョジョの奇妙な冒険の第6部に出てくるスタンド「ハイウェイ・トゥ・ヘル」は、AC/DCの当アルバムが元ネタです。
それでは、『Highway To Hell』の全曲レビューに移りましょう!歌詞の内容もざっくり書いていますので、ご参考くださいませ。
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Highway To Hell
1曲目からアルバムタイトル曲です。今なお演奏される、AC/DCの代表曲のひとつです。ギターを弾く身としては何度もコピーした、思い出深い1曲です。
超シンプルなリフ、手数なんて概念のない4つ打ちの超ストイックなドラム、それにボン・スコットのしゃがれ声とコーラスワークがいい塩梅で噛み合い、良いグルーヴを生み出しています。音の隙間がうまく活用されていて、大好き。
邦題だと「地獄のハイウェイ」ですが、厳密に訳すと「地獄へのハイウェイ」ですよね。
歌詞の内容も、「地獄へのハイウェイに乗ってるぜ!ヒュー!」といったもので、頭空っぽな感じが最高です。
2.Girls Got Rhythm
軽快な2曲目。ジャキジャキした乾いたリフが心地よく、典型的な縦ノリロックンロールです。個人的にこのアルバムで一番好きな曲です。
歌詞の内容は、夜の営みについてです。landslideやらI’m in too deepやら言ってますが、暗喩ではあるものの思いっきり下ネタですね。これぞロック。
PVはなかったので、オフィシャルからアップされていたブライアン・ジョンソン版のライヴ映像を掲載しています。やっぱりカッコいい。
3.Walk All Over You
ドライヴ感溢れる3曲目。緩急つけたテンポでゴリゴリと演奏が展開されます。アンガス・ヤングの動きも他の曲の映像よりも激しいです。
ボン・スコットのシャウトが良い感じに馴染みます。
内容は、これまたセックス関係ですね。あなたの上を歩き回るわけです、ええ。
4.Touch Too Much
前3曲までのゴリゴリのロックから急に落ち着いたミドルテンポになります。十分速いですけどね。
序盤における休憩要素が強い楽曲ですが、ロックのエッセンスは多分に含んでいますので、勢いは落とさず違和感なく落ち着けます。
タイトルからお察しの通り、これもセックス関係の歌。Deep down insideやらThis kind of woman’s gonna drive me insane(この手の女性は私を狂わせるだろう)だとか言っていて、魅力的な女性との触れ合いについて述べています。
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5.Beating Around The Bush
『Touch Too Much』で落ち着いたところに、ザクザクと刺してくるリフ。ドライヴ感がたまりません。
ブギーのツボも押さえたハードロックといった趣の楽曲です。前アルバムまでのハードブギーの流れを受け継いでいる楽曲かもしれません。他の曲はかなりポップに寄っていますからね。
タイトルは直訳すると「藪の周りを叩く」という意味わからない内容ですが、「遠回しに言う」という慣用句として使われているものです。(参考:https://ejje.weblio.jp/content/beat+around+the+bush)
歌詞は、パートナーの不倫を疑うような内容です。探り探り話をしているので、「Beating Around The Bush」なのですね。
めちゃくちゃライヴ受けする楽曲だと思うのですが、残念ながらライヴでは演奏されていないようです。一度生で見てみたいなぁ。
6.Shot Down In Flames
手数なんてない極めてシンプルなドラムにひたすらリフを刻んでいく、THE ハードロック!な曲。かっこ良いことこの上ない。この曲はコーラスがなく、ボン・スコットだけで歌い上げられています。
ギターソロ時のピッキングハーモニクスやスクラッチも混じった咆哮は、何度聴いても素晴らしい。ギターが唸ってます!どの楽曲も似たようなエッセンスは含んでいるのですが、なぜかこの曲はとても際立つのです。コーラスがないぶん、ギターが歌っているような気がしてなりません。
歌詞は、ナンパしようとしたら銃撃されたやつの話。振られたとかそういうニュアンスかもしれませんが、それにしては騒ぎ過ぎなので、そういう風に捉えています。
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7.Get It Hot
明るい調でブギーを奏で、只でさえ分かりやすいAC/DCのリフのうちでもトップクラスにキャッチーです。いいですねぇ。
歌詞はこれまた女性関係の話。もうほとんど女性関係の話しかしてないですね…。ナニをアツくするわけです。何をとは言いませんが、お察しください…。
8.If You Want To Blood (You’ve got it)
これまた超キャッチー。『Highway To Hell』の楽曲は全体的にギターの音が明るくて、フレーズもポップで聴きやすいんですよね。そこがメジャーヒットした大きな要因かなと思っています。
『Highway To Hell』関連PVは、どの曲でも同じステージでひたすらライヴしまくっているだけの内容ですが、ずっとライヴし続けていたせいかアンガス・ヤングの制服の上着が脱げています。というか、ギターに突き刺されてビジュアル的にえらいことになっています。
歌詞も「血に飢えているぜ…血を寄越せ!」と思いっきり殺人についての話なので、、ここまで歌詞との統一性のあるPVもなかなかないのではないでしょうか。裏表とか全く無い彼らのスタンスが大好きです。
ちなみに、この時期リリースされたライヴアルバムは、この楽曲と同じタイトルがつけられています。邦題が『ギター殺人事件』と、PVの内容とジャケットデザインから何の捻りもなくそのまんまですね。ボン・スコット在籍時のライヴの様子がよく分かる貴重なアルバムなので、非常にオススメです。
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9.Love Hungry Man
愛に飢えている男が求愛しているという内容の歌です。やっぱりセックス関係の内容ですね。ここまでの徹底ぶりは本当に凄い。
そういう軽いヤツについての歌なので、曲調も明るめです。他の楽曲と比較してよくベースが動くのが特徴的。
10.Night Prower
最後にふさわしいしっとりしたブルース調の楽曲。
「夜に徘徊してる人」というタイトル通り、光の下を歩けなくなった人(裏稼業の人?)について語っています。急激に渋さが増し、ソフトランディングしていくような残響感に浸ることが出来ます。
ボン・スコットによるご挨拶「Shazbot, Nanu nanu(F**k、バイバイ)」で締め。これが本当に最後の言葉になるなんて、思いもしなかったんじゃないでしょうか。
(Nanu nanuの参考:https://www.urbandictionary.com/define.php?term=Na-Nu%20Na-Nu)
まとめ
音楽性はそこまで変化はありませんが、プロデューサーの手腕もあってか楽曲クオリティが洗練されているので、AC/DCのアルバムの中でも『Highway To Hell』は非常に取っつきやすいアルバムだと思います。
個人的な印象として、次作『Back in Black』以降はメタル寄りで洗練されており、前作『Powerage』以前はブギーやロックンロール寄りの荒々しさが際立っていると感じています。そんな中で『Highway To Hell』は程よくバランスが取れており、AC/DC入門用アルバムとしても最適だと思います。個人的にはAC/DCの中で一番好きなアルバムです。
『Highway To Hell』でセールス面も前作から大きく伸長し、さぁここからだ!という気合いも入りまくったその時に、フロントマンであるボン・スコットがまさかの急死。窮地に陥った彼らでしたが、新メンバーを迎え、全世界で4400万枚以上のセールスを記録している音楽史上に残る大傑作『Back in Black』が爆誕します。
そんなBack in Blackのレビューはこちらです↓
AC/DCのオススメアルバムについてもまとめていますので、こちらもぜひご一緒に。
それでは!