小沢健二のアルバム「LIFE」の全曲紹介です。
『LIFE』は1994年リリースの、小沢健二として2枚目のアルバムです。このアルバムからシングルカットされた曲も多く、小沢健二の名前が一般層にも有名になるきっかけを作った作品です。
ホーンセクションを効果的に使用したソウルフルなポップサウンドが特徴的で、歌詞もわかり易い単語を用いて色鮮やかな表現がなされており、とても聴きごたえのある内容となっています。
そんな小沢健二の「LIFE」について、全曲レビューをしてみようと思います。小沢健二関連楽曲で特有のお楽しみとして、他の曲からの引用がありますが、知っている範囲で触れてみようと思います。
1.愛し愛されて生きるのさ
ギターのカッティングと小刻みなオルガンがカッコいい1曲目。これぞポップスって感じです。
夕方に簡単に雨が上がったその後で
お茶でも飲みに行こうなんて電話をかけて
駅からの道を行く 君の住む部屋へと急ぐ
個人的にとっても好きな一編です。電話で話そうではないのです、住む部屋へと急ぐのです。やっぱり直接会いたいわけです。インターネットが普及した今、四六時中誰かと繋がっていられるようになり、電話という行為もあまりしなくなってしまいましたが、やはり直接会うに勝るコミュニケーションはありませんよね。
いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて生きるのさ
それだけがただ僕らを悩める時にも未来の世界へ連れてく
愛は僕らを、未来に連れて行ってくれるのです。
引用元と言われている曲で分かりやすいものは、ゴダイゴの「銀河鉄道999」でしょうか。サビ部分がAメロと似ています。「The Galaxy Express〜」の部分ですね。個人的には微妙な気がしますが、一応載せておきます。
[the_ad id=”285″]
2.ラブリー
小沢健二の代表作のひとつ。
王子様路線全開の楽曲で、「君と僕とは恋に落ちなくちゃ」とまで言い切っています。普通に生きているうちは一生使うことはない文章でしょう。
バックトラックは似たようなフレーズが繰り返されることでトリップ感が生まれ、7分半ほどある長い曲ですがとても聴きやすい楽曲です。
この『ラブリー』で紅白歌合戦にも出場しています。ライヴでも歌のクオリティが変わらないのはさすがです。肩パットが入って肩周りが凄いことになっているのはそんな時代だったからですかね。背の高さと顔の小ささに驚きます。
引用元とされている曲は、Betty Wrightの「Clean Up Woman」。イントロそのまんまですね。
[the_ad id=”285″]
3.東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー
これも王子様感溢れる一曲で、「こんな恋を知らぬ人は地獄へ落ちるでしょ」というパワーセンテンスが一際光っています。絶対言うことないよ…なんなら私とっくに地獄に落ちてるよ…
イントロの小刻みなベースフレーズからのんきなコーラスが入り、サビの途中でぐいっとキーが上がるなど、非常に印象的な楽曲です。
落ち着いたラテンな雰囲気が全編を覆っており、夏場のドライブのお供に最適です。PVも自動車運転してますしね。
浮かれ浮かれてる場所で 夜がすぎる間
恋の次第を盛り上げたいよ 七色に輝く素敵なナイト・アンド・ディ 続くのさ
浮かれているっていうのも、しっとりと浮かれている感じがしますよね。良い。
元ネタと言われているのが、ジルベルト・ジルの「De Bob Dylan a Bob Marley, um samba provocação」。「パーラーパー」のコーラス部分がほぼそのままです。曲全体の雰囲気も似てますね。
4.いちょう並木のセレナーデ
このアルバムの中で唯一のライヴ仕様の曲。ギターの響きがホールでのライヴっぽく、観客の手拍子や声が音源に入っています。
『LIFE』の中ではトップクラスに落ち着いた楽曲です。
晴海埠頭を船が出てゆくと 君はずっと眺めていたよ
そして過ぎて行く日々を ふみしめて僕らはゆく
日常で色々とあったんだろうなぁ、と思わされてしまいますね。
タイトルの元ネタは、サザンオールスターズのキーボードである原由子の楽曲「いちょう並木のセレナーデ」から。そのまんま引用ですね。
5.ドアをノックするのは誰だ?
ストリングスとオルガンの絡みが心地よい楽曲。
歌詞はナルシスト感溢れた自信たっぷりの内容です。こんな事なかなか言えませんしできても実行できません。
誰かにとって特別だった君を マークはずす飛び込みで僕はさっと奪い去る
他にも、最初は「たぶんこのまま素敵な日々がずっと続くんだろ」と推測だったのが、最後になると「続くんだよ」と断定になっているのもちょっとドキッとしますよね。確信しちゃった!
元ネタはJackson 5の「I Will Find a Way」。そのまんますぎてビビります。
6.今夜はブギー・バック(nice vocal)
小沢健二どころか、1990年代を代表すると言っても過言でない1曲。
スチャダラパーとコラボしたヒップホップ調の楽曲。エフェクトや歌詞の内容からふわふわとした気分になりますが、東京スカパラダイスオーケストラが参加していることもあってか、全体的にソリッドなグルーヴを刻み続けるため中だるみがありません。
ヒップホップ、スカ、ポップスとこの曲の参加者の音楽性はそれぞれかなりバラバラなのだろうと思いますが、小沢健二の歌唱で全体にまとまりがでており、圧巻です。
Kreva、加藤ミリヤ、宇多田ヒカルなど、リリースから20年以上を経過した現在でも多くの人達にカバーされ続ける、名曲中の名曲です。
元ネタは、Nice & Smoothの「Cake & Eat It Too」。
[the_ad id=”285″]
7.ぼくらが旅に出る理由
歌詞は、遠い地を旅する恋人に向けて、幸せを祈り愛を確かめ合うような内容。
完全に遠距離恋愛の曲ですが、距離がどれだけ離れていようと愛は深まっていくと説きます。遠距離だから別れよう、という話の多いこと多いこと。真に愛し合っている場合、物理的な距離なんて関係ないのです。
そして君は摩天楼で 僕にあて手紙を書いた
「こんなに遠く離れていると 愛はまた深まっていくのさ」
遠くまで旅する恋人にあふれる幸せを祈るよ
この歌の中では「恋人」となっていますが、それ以外の「自分の元から離れていく人」に対しても有効な曲なのではないかと思っています。元恋人もそうだし、会社を辞めていく同僚、そして亡くなった方、等々…。親しい人が新しいところへ旅立っていくときに送るエールとしてはピッタリの曲かもしれません。
ぼくらの住むこの世界では 旅に出る理由があり
誰もみな手をふってしばし別れる
皆色んな事情から旅に出てしばし別れているだけで、永遠の別れではないのです。再会の希望が含まれている、素敵な歌詞だと思います。
PVは、小沢健二が朝の身支度をしながら歌っている演出がなされています。やたらコミカルな動きをしています。
「ぼくらが旅に出る理由」の元ネタは、ポール・サイモンの「You Can Call Me Al」と「Late In The Evening」。
「You Can Call Me Al」からはイントロとホーンセクション、「Late In The Evening」からは間奏を引っ張ってきています。「You Can Call Me Al」はあまりにそのまんますぎて大丈夫か心配になります。
[the_ad id=”285″]
8.おやすみなさい、仔猫ちゃん!
夏の嵐にも冬の寒い夜も
そっと明かりを消して眠ろう
またすぐに朝がきっと来るからね
Come On
このフレーズが本当に大好き。辛い時に聴くと、また朝が来ると信じて、本当に安らかに眠りにつけます。
人生はあらゆる場面で「ディズニー映画のエンディングみたいな甘いコンチェルト」が流れていて、それはそれは美しいものなんだって訴えてくるような歌詞です。しっかり歌詞に向かい合えば向かい合うほど、涙腺が緩んできます。
元ネタはMFSBの「Smile Happy」。イントロ殆どそのまんま引っ張ってきています。
[the_ad id=”285″]
9.いちょう並木のセレナーデ (Reprise)
4曲目のオルゴール版。
『僕らが旅に出る理由』→『おやすみなさい、仔猫ちゃん!』と少しずつ落ち着いてきたところに、オルゴールの優しい音できれいに締められています。
まとめ
小沢健二の『LIFE』について、全曲紹介してみました。
最初にも書きましたが、小沢健二の凄いところって、めちゃくちゃ易しい日本語でヴィヴィッドな世界を表現できることだと思うんですよね。『LIFE』についても、聴く度に色んな感情が湧いて出てきてしまうので、良くも悪くも困ってしまいます。このレビューも語り足りないところもあるので、もっと拡充していくかもしれません。
それでは!