AC/DCのアルバムを全部まとめてみた記事の第2段です。
ゴリゴリのハードロックを奏で続け、キャリアの全体的にオススメアルバムばかりのAC/DCですが、マイナーどころのアルバムまで言及した記事が少ないので、作ってみました。
今回は、名盤中の名盤「Back In Black」から始まる1980年代編です。
1970年代編はこちら。
Back In Black(1980年)
前作『Highway To Hell』でスマッシュヒットをとばし、さぁこれからだ!という時にボーカルのボン・スコットが急死。
急遽次のボーカルとしてイギリスのグラム・ロックバンド『Geordie』に在籍していたブライアン・ジョンソンをオーディションから抜擢し製作されたのがこの『Back In Black』です。
Highway To Hellの頃からよりドンシャリ系の音になり、音の隙間も効果的に利用してメリハリのついたソリッドな印象を持つ音使いになりました。
ジャケットはボン・スコットを追悼して真っ黒なデザインとなっていますが、内容はいつもどおりの「酒!女!ドラッグ!」というロックンロールらしいロックンロールを奏でています。ボン・スコットの死因がアルコールの過剰摂取起因なのに、本当にスゴイです。逆にいつも通りやらないと、AC/DCじゃなくなっちゃいますものね。
こうして制作された『Back In Black』ですが、おぞましいレベルでの爆発的なヒットとなり、一時期はMichael Jacksonの『Thriller』に次いで世界に2番目に売れているアルバムと呼ばれたりもしていました。
Pink Floydの『Dark Side Of The Moon』やEaglesの『Their Greatest Hits 1971-1975』等の他のアルバムが世界で2番目に売れている説もあり、本当のところは不明です。ただ、大ヒットしていることは間違いないので、最低でも世界で5番目前後に売れてはいるんじゃないのかなとおもっています。
参考資料として、アメリカレコード協会(RIAA)のチャートだとプラチナム・ディスク(100万枚売上で授与)×22となっており、アメリカだけで2,200万枚売り上げているようです。名称もダイヤモンド・ディスク(1,000万枚売上)にクラスアップしています。また、Australia Recording Industry Association(ARIA)の2013年チャートではプラチナム・レコード×12と書いてあるので、オーストラリアだけで1,200万枚は売り上げている様子です。
ちなみに、ブライアン・ジョンソン在籍時のGeordieの映像がありました。普通に歌うまい。そして若い。
甲高い発声法を取り入れる前のようで、初めて聴いた時は『声低っ!』と思ってしまいました。グラム・ロックだけあって音楽性がAC/DCとはまるで違うので驚きましたが、その後現在までAC/DCのフロントマンとして在籍し続けている事を思うと、見る目は確かだったんだろうなぁと感心してしまいました。
元々AC/DCもグラム・ロックっぽい人がボーカルやってた時期もあったので、相性もよかったのかもしれませんね。
PVも沢山作られていて、人気の高さが伺えます。同じ場所で同じようにライヴしてるだけですが、それだけで彼らの魅力は十分伝わるっていうのがとても格好いいですよね…。
収録楽曲
- Hells Bells(PV, LIVE1, LIVE2, LIVE3)
- Shoot to Thrill(PV, LIVE1, LIVE2, LIVE3)
- What Do You for Money Honey(PV)
- Givin the Dog a Bone
- Let Me Put My Love Into You
- Back In Black(PV, LIVE1, LIVE2, LIVE3, LIVE4)
- You Shook Me All Night Long(PV1, PV2, LIVE1, LIVE2)
- Have a Drink on Me
- Shake a Leg
- Rock and Roll Ain’t Noise Pollution
For Those About To Rock (We Salute You)(1981年)
前作『Back In Black』リリースから僅か1年でリリースされたのが『For Those About To Rock (We Salute You)』。前作がどれだけ売れようが軸のブレは微塵もなく、ただただロックンロールを奏で続けるAC/DCです。
ジャケットに描かれている大砲はタイトル曲「For Those About To Rock (We Salute You)」の終盤でバンバンぶっ放されており、予算の潤沢さを感じる事が出来ます。『Back In Black』という偉大すぎる前作を超えてやろうという気合によるものだったのかもしれません。「Hells Bellsが巨大な鐘だったんだし、次は大砲だ!」的な。
『Back In Black』と同じ制作陣によるアルバムであるため、音楽的にも殆ど変化はありません。ギター・ベース・ドラムの音作りやミックスバランスがちょうど良く、聴いていて心地よさを感じられました。ただ、ボーカルの声が若干絞られてリバーブが掛けられているため、若干聞き取りにくく迫力も抑えられてしまっているのが残念ポイントです…。
『Back In Black』でも出来なかった全米チャート1位を成し遂げたアルバムでもあります。勿論、AC/DCとして初めての全米チャート1位です。
収録楽曲
- For Those About to Rock (We Salute You)
- I Put the Finger On You
- Let’s Get It Up
- Inject the Venom
- Snowballed
- Evil Walks
- C.O.D.
- Breaking the Rules
- Night of the Long Knives
- Spellbound
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Flick of the Switch(1983年)
『For Those About To Rock (We Salute You)」からかなり体制が変わり、色んな意味で変化が生まれたアルバムです。
まず、デビューから在籍していたドラムのフィル・ラッドが離脱し、後任としてDIO等の有名バンドで腕を鳴らす事となるサイモン・ライトが加入。また、プロデューサーを務めていたマット・ラングも離れ、ヤング兄弟のセルフプロデュース体制となりました。
前述の通り、『Flick of the Switch』はヤング兄弟によるセルフプロデュースとなっており、AC/DCがやりたかった音楽を全力でやっている感がとても出ているように感じます。特にマット・ラングが携わった『Highway To Hell』『Back In Black』『For Those About To Rock (We Salute You)』での時代に合わせた洗練された音作りとはまるで違うジャキジャキした音を奏でているので、本当はこういう感じの音でロックンロールやりたかったんだろうなぁと言うのが伝わってきて胸が熱くなるのです。
ただ、AC/DCみたいに過去どれだけ大ヒットを飛ばしていようが、自分がやりたい音楽が市場で受け入れられる訳ではなく、過去3作と比較するとやはり売上は落ちてしまっています。プラチナム・レコードは授与されているレベルで売れてはいるんですけどね、前作までが偉大すぎた…。
売れてない理由も何となくわかるのです。1曲目に「Rising Power」は渋すぎるから絶対「Guns For Hire」を1曲目に入れた方がよかったし、音をジャキジャキさせるにしても『Highway To Hell』くらいのレベルでもっと整えて聴きやすくした方が良かった等々、前の3作のクオリティコントロールが尋常じゃなかったので、素人目ながら粗が目立つなぁと感じてしまう事も事実です。やはりマット・ラングはスゴかったのだと思わされてしまう作品でもあります。
今となっては殆どライヴで演奏しない楽曲ばかり収録されているアルバムですが、AC/DCが本当にやりたかった音楽を聴きたいって方にはオススメです。粒揃いの隠れた名作アルバムだと思っており、個人的には『Highway To Hell』と『Back In Black』に並ぶくらいには好きなアルバムです。セールス的に振るわかった、一般的には”暗黒期”と呼ばれる時期ではありますが、是非ご一聴を。
特に、曲順を並び替えるとアルバムの印象がガラッと変わるので、1回全部聴いてから曲順を入れ替えてみても面白いかと思います。
収録楽曲
- Rising Power
- This House Is On Fire
- Flick of the Switch
- Nervous Shakedown
- Landslide
- Guns for Hire
- Deep In the Hole
- Bedlam In Belgium
- Badlands
- Brain Shake
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Fly on the Wall(1985年)
『Flick of the Switch』と同様に、ヤング兄弟によるセルフプロデュース2作目です。
『Fly on the Wall』では音作りを当時流行りだったLAメタルっぽく中音域もリッチな感じにしてみたり、これまではシンプル極まっていたPVにアニメーションやちょっとした劇を取り入れてみたりと、前作での失敗を取り返す為の試行錯誤のあとを感じることができます。
試行錯誤の結果は、残念ながら魅力にはあまり繋がりませんでした。アルバム全体で聴くと、やはり『Back In Black』を始めとしたその他作品群と比較してしまうと見劣りしてしまうのが正直なところです。これだ!という曲があんまりないんですよね…。PVの映像も何だかよく分からないってのが正直なところですし。
曲単位で見ても、『Sink The Pink』や『Danger』等、いい曲は幾つかあるのですが、これまでにリリースされた名曲群が強すぎて相対的に霞んでしまって目立たないという状態にあります。特に、『Sink The Pink』はプロデューサーの手が入った上でリリースされていれば、今もセットリストに入ってた可能性もあるんじゃないかなぁと思っています。
セルフプロデュース体制は『Flick of the Switch』と『Fly on the Wall』の2作品で終了し、次作から外部プロデューサーを再度登用し、その後の復活に繋がっていくことになります。
前作の『Flick of the Switch』同様、収録作品がライヴで演奏されることがほとんどない不遇のアルバムですが、AC/DCのやりたかったであろう楽曲を聴くことが出来るという意味では、ファンは一度は聴いておいた方がいいかと思います。
収録楽曲
- Fly on the Wall
- Shake Your Foundations
- First Blood
- Danger
- Sink the Pink
- Playing with Girls
- Stand Up
- Hell or High Water
- Back In Business
- Send for the Man
Who Made Who(1986年)
『シャイニング』や『IT』などでも有名な現代ホラー作家のスティーヴン・キングが監督を務めた映画『地獄のデビルトラック(原題:Maximum Overdrive)』のサウンドトラックとして既存の楽曲と新規の数作品がまとめられたアルバムです。タイトルから何となく察せられる通り、映画の興行成績は微妙だったようですが、RIAAチャートを見る限りではアルバムの売上は500万枚と成功しているようです。
新曲として制作されたのは3曲。タイトル曲の「Who Made Who」は歌入りですが、その他2曲(「D.T.」と「Chase the Ace」)はAC/DCでは珍しい歌無しのインスト曲です。
「Who Made Who」のPVは、アンガス・ヤングが増殖して大量のアンガス・ヤングに囲まれながらライヴするというカオスな内容となっています。妙に凝ってて面白いので、是非見てみて下さい。ドラムの音が打ち込み臭くなって、ちょっと無機質な雰囲気を醸しているのが特徴的です。
2010年にリリースされた映画『Iron Man 2』向けのサウンドトラックが現れるまで、長らく実質のAC/DCベストアルバムとして機能していました。そういった意味でも重要な作品の一つです。
収録楽曲
- Who Made Who
- You Shook Me All Night Long
- D.T.
- Sink the Pink
- Ride On
- Hells Bells
- Shake Your Foundations
- Chase the Ace
- For Those About to Rock (We Salute You)
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Blow Up Your Video(1988年)
『Flick of the Switch』『Fly on the Wall』とセルフプロデュース2作品が不発に終わり、デビューから『Powerage』までプロデューサーを務めていたハリー・ヴァンタとジョージ・ヤングが再度プロデューサーとして起用され製作されたのが『Blow Up Your Video』。
アンガス・ヤングがテレビ画面をぶち破ってるインパクトの大きなジャケットが特徴的です。『お前のビデオを爆破するぞ!』というタイトルで煽っている通り、当時流行していたMTVへの挑戦・挑発と、アンガス・ヤングというキャラクター性を強調したかったのだろうなと思います。
当時流行していた打ち込みをフル活用したキラキラした音楽や華美なPVを使うようなアーティストとは対極の存在であるAC/DCなので、このジャケットのメッセージをビシビシと感じる事ができます。
肝心の楽曲ですが、前2作と比較すると非常にキャッチーになりました。「Heatseeker」や「That’s The Way I Wanna Rock ‘N’ Roll」といった耳に残るリフが印象的な楽曲から、「Kissin’ Dynamite」等のブルース、「Ruff Stuff」といったちょっとしたポップスに近い楽曲まで幅広く配置されており、聴いてて飽きません。特に「Ruff Stuff」のようなリバーブの効いたしっとりギターイントロなんて、ゴリゴリギターばかりだったAC/DCの作品中ではこれまでなかった革新的な楽曲です。ライヴでは演奏されてないようですが…。
『Flick of the Switch』と『Fly on the Wall』でのマニアックな楽曲群との変わり様が凄まじいです。やはりプロデューサーという外部目線の有無って大事なんだと実感できます。特にAC/DCの音楽性が時代の流行に左右されない純化されたロックンロールなので、セールスを上げる為には多少でも時代の流れに迎合させる必要があり、その調整する立場の人は必要なのでしょうね。
全体的に聴きやすく、個人的には非常におすすめのアルバムです。
収録楽曲
- Heatseeker
- That’s the Way I Wanna Rock ‘N’ Roll
- Mean Streak
- Go Zone
- Kissin’ Dynamite
- Nick of Time
- Some Sin for Nuthin’
- Ruff Stuff
- Two’s Up
- This Means War
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’74 Jailbreak(1983年・番外)
世界デビュー前にリリースしていたオーストラリア版アルバムに収録されていた楽曲をピックアップしてまとめたEPです。
タイトル曲「Jailbreak」は、その後現在に至るまでライヴセットリストに組み込まれ続ける重要な曲であるはずなのですが、当EPがグローバル版では初出。なぜ他のアルバムに収録されなかったのかとても不思議に思っています。リフも格好よく、アンガス・ヤングの独壇場と化すギターソロパートも魅力的です。
個人的に好きな楽曲は「Baby, Please Don’t Go」。色んなアーティストがカバーしている名曲で、勿論AC/DCもカバー版ではあるのですが、ドライヴ感溢れるAC/DCらしい楽曲に仕上がっており、とても大好きです。ギターを始めたばかりの頃にイントロをコピーしようとして挫折した思い出があります。
初期の初期の楽曲になるのでガレージ・ロックやブルース・ロックという趣が強く、リリース当時のゴリゴリハードロック路線とは異なる方向性ではありました。昔を懐かしむ人用のリリースだったのでしょうかね?
しかし、オーストラリア版限定状態で埋もれていた貴重な曲群を掘り起こしてくれたという意味で、とても重要な1枚です。
収録楽曲
- Jailbreak
- You Ain’t Got a Hold On Me
- Show Business
- Soul Stripper
- Baby, Please Don’t Go
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まとめ
今回はAC/DCの1980年代のアルバム作品をまとめました。
『Back In Black』の世紀の大ヒットから始まり、セルフプロデュースの暗黒期を経て『Blow Up Your Video』で反撃の狼煙を上げるという激動の年代でした。
70年代よりはペースは落ちているものの、それでも殆ど毎年何かしら作品をリリースしている恐ろしいバンドです。セールスやアルバムの完成度に差はあれど、音楽性についてはあまり差は無いので、ロックンロール好きな方は是非上記アルバムを全部聴いてみて下さい。暗黒期と呼ばれる『Flick of the Switch』や『Fly on the Wall』も、いい曲揃ってますよ。
次回は、みんな大好き「Thunderstruck」が収録された90年代の代表作『Razors Edge』から始まります。
それでは!