音楽

【全曲紹介】電気グルーヴ – VITAMIN

電気グルーヴのアルバム「VITAMIN」の全曲紹介記事です。

『VITAMIN』は1993年12月1日リリースの、電気グルーヴ4枚目のアルバムです。

以前のアルバム(「FLASH PAPA」「UFO」「KARATEKA」)までのふざけまくった歌詞のラップが全面に出ていた作風から軌道修正し、テクノ色がかなり色濃いアルバムです。

全10曲中5曲がインスト曲と、歌ものが当然であったであろう当時のJ-POPシーンを想像すると攻めた楽曲構成をしています。

音の面での特徴は、その当時のテクノシーンで一大センセーションが起きていた伝説のシーケンサー、Roland「TB−303」が多用されていること。こんな音のやつです↓

ツマミをいじってフィルターを開閉しまくることで独特のビヨビヨした音色を出すことができ、このグルーヴ感がアシッドハウスという一つのジャンルを勃興させるまでに受けに受けたということです。現在でもリバイバル品として同モデルをベースとしたシーケンサーがリリースされたりしています。

インターネットもなく情報収集難易度が高かったであろうその当時、海外の流行をしっかりキャッチアップ出来ていた彼ら、本当に凄いと思います。その当時のリスナーにとっても、世界の最先端を追える重要なアーティストだったのでしょう。

そんな彼らの転換点である「VITAMIN」の全曲紹介と参りましょう!

1.HAPPY BIRTHDAY

タイトルからして誕生日を祝っていそうですが、単に歳を重ねた事に対するお祝いではないでしょう。

恐らく「脱皮」だとか「変化」だとか、そういう意味合いからくる「誕生」を祝っているんじゃないかと思います。

これまでの作風から一皮向け、音楽性がいい方向に変わった事を自覚しており、それに対する喜びの歌なのかもしれません。
余談ですが、アルバム「A」に収録されている「かっこいいジャンパー」も、似たようなニュアンスで制作されたのではないかと思っています。

バックでもTB-303の音がうねっており、このアルバムのサウンドコンセプトがよく分かる、良い曲です。

作詞、作曲:石野卓球

2.DISCO UNION

テレビ番組のBGMでも多用されている曲。名前こそ知られていなくても、このアルバムの中だと一番知名度は高いかもしれません。

ワウギターや女性のソウルフルな歌も入っており、他の曲と比べてもファンキーな仕立て。

「B.B.E.」(アルバム「UFO」収録)の冒頭みたいなメカニカルボイスも入っており、昔からのネタもしっかり引き出しとして使っているのはさすがです。

作詞・作曲:石野卓球

3.ハイキング

ハイキングしている時のようなふわふわした感覚を覚える曲。

「ハ・イ・キーング!」と脳天気に叫んでいるところが癖になります。

長時間歩く事になった場面でこの曲の鼻歌を歌うと楽しくなってきます。そんなときのお供にどうぞ。

作詞:ピエール瀧、作曲:良徳砂原

4.ニセモノフーリガン

前作までの「おふざけ歌詞」と、当アルバムの「本格テクノ志向」が融合した個人的に大好きな1曲。

バックトラックはDISCO UNIONに並ぶダンサブルなトラックでめちゃくちゃかっこいいのに、歌詞は野次馬根性入ったフーリガンについて。やたら細かいプロフィール開示(子供が5人とか実家が一間とか)で無駄な臨場感を演出しています。そこが(・∀・)イイ!!

なのですが、ライヴでやってなさそうなんですよね…絶対盛り上がるのに…

作詞:ピエール瀧、作曲:石野卓球

5.富士山

ライブのセットリストにおいては現在でも常連ですね。

ライブでは、ピエール瀧が富士山の着ぐるみを着て頭から噴煙を出しながら暴れまくるパフォーマンスが有名です。イメージはこういうやつ↓

「ふっじっさーん!」という分かりやすい掛け声、アッパーでノリやすいのが人気の要因だと思います。

人気故か、AAもあります。/^o^\フッジッサーン

作詞・作曲:ピエール瀧

6.STINGRAY

ここからインストゾーン。

柔らかいシンセとアタックを抑えたドラムで浮遊感を演出しています。

アルバム全体で見ると少々地味な印象ですが、前曲までのアッパーさを抑え後半戦に突入していく為のフックとなる、重要な曲です。

作曲:良徳砂原

7.POPCORN

TB-303サウンド全開の一曲。BPMも早くてグルーヴ感も心地よく、TB-303初心者には最適な1曲だと思います。

カバー曲であり、原曲はアメリカの作曲家、ガーション・キングスレイの同名曲。1969年の作品らしいですが、そうは思えぬかっこよさ。電気グルーヴ以外にも色んなアーティストがカバーしているそうです。

ちなみに、ディズニーのエレクトリカルパレードでお馴染みの「Baroque Hoedown」という曲もガーション・キングスレイが関わっています。

作曲:Gershon Kingsley、編曲:石野卓球

8.新幹線

後のアルバムでも共演する五島良子の透き通ったコーラスから始まる楽曲。

10分近くある長い曲ですが、このコーラスの透明感と、TB-303を軸としたしばき上げるようなバックトラックが持つ緊張感が合わさり、最後まで飽きずに聴くことができます。

作曲:石野卓球

9.SNOW AND DOVE

全体に強めのリバーブが掛かっており、幻想的な雰囲気な曲。

静かに着地していくような楽曲であるため、これで締めても良かったんじゃないかと思いますが、当時としては流石に攻めすぎと判断したのか、この曲の次にもう1曲入ってます。

作曲:石野卓球

10.N.O.

歌もの。電気グルーヴの前身バンド「人生」からある曲だそうです。現在でもライブで演奏される電気グルーヴの代表作の一つ。

これまでのハードコアテクノの流れから打って変わって、可愛げのあるポップな曲調。しかし、歌詞は若者の鬱屈とした心のうちを描写しています。

「学校ないし家庭もないし暇じゃないしカーテンもないし 花を入れる花瓶もないし 嫌じゃないしカッコつかないし」

ライヴ映像や楽曲だけだと馬鹿騒ぎしまくっているようにしか見えなかった当時の石野卓球の多感な心情を垣間見ることができます。

その感じるところは、現代の日本の若者とも通ずるところはあるんじゃないかと思います。少なくとも、私にはあります。

学校ないし 家庭もないし ヒマじゃないし カーテンもないし
花を入れる花瓶もないし 嫌じゃないし カッコつかないし

作詞・作曲:石野卓球

ライヴDVD「ミノタウロス+ケンタウロス+清水ケンタウロスDVD」

VITAMIN期のライヴが収録されている映像ソフトが、「ミノタウロス+ケンタウロス+清水ケンタウロスDVD」。

2つのツアーが1つのパッケージにまとまっており、VITAMIN期のものはケンタウロスの方。正式ツアー名称は「野村ツアー」。シミズケンタウロスはおまけのビデオクリップです。

基本は打ち込みで、ステージ上にある楽器は砂原良徳の回りにあるキーボード群だけ、石野卓球とピエール瀧については楽器の操作はせず歌い踊り狂うという、今のDJスタイルとは大きく異なるものとなっています。

アルバムからアレンジを大きく変えている曲も多く、特に「N.O.」についてはアルバムのポップアレンジからハッピーハードコアに変貌しています。最後の「電気ビリビリ」に至っては178BPMまでテンポを上げた挙げ句にラップしようとするもんだから、テンションが強制的にMAXまで持っていかれます。とっても、とってもおすすめなDVDです。

まとめ

電気グルーヴのアルバム、「VITAMIN」の全曲紹介をしてみました。

かなりインスト寄りの楽曲構成であり、歌ものばかりだったであろう当時の日本のメジャー音楽シーンにおいて、よくリリースできたなぁと思わされる内容です。しかしオリコンランキングは5位と、当時の日本の懐は非常に広かったのかもしれません。

アルバムとしての完成度が非常に高く、飽きずに聴き進めることができる名盤だと思います。テクノの入門用アルバムとしても是非、聴いてみてください!

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もいもい
多趣味なリーマン。音楽・ゲーム・旅行等を中心に、興味を持った事柄について取り上げていきます。