電気グルーヴのアルバム「DRAGON」の全曲紹介です。
前作「VITAMIN」から続いてインスト曲多めのアルバムです。
シングルカットされた曲が多く、教育番組に提供されたものもあるため、アルバムは知らなくても収録曲単品で知っているという人は多いのではないでしょうか。
サウンド面では、VITAMINと同じく、TB-303やTR-909を駆使したジャーマンテクノ直系の音作りが基礎にあり、そこに音ネタやフレーズを追加してより幅を持たせたのがこのアルバムだと思っています。
ちなみに、ジャケットのギターは、TEISCOの「Spectrum 5」というモデルです。カラフルなスイッチが特徴的ですよね。
それでは、レビューをしてまいりましょう!
『DRAGON』全曲紹介
1.ムジナ
1曲目から10分に迫るインスト曲。
鼓のようなパーカッションでのグルーヴと沈み込むようなシンセが絡み合うのが前半。「デンキグルーヴデンキグルーヴ…」とサブリミナルなコーラスが入っており、さながら洗脳ソング。
しかし、7分30秒あたりからピエール瀧の掛け声をきっかけにテンポが急激にアップ。TB−303も裏で暴れまわってます。
ピエール瀧のボイスが入ると一気に電気グルーヴの個性が出ると実感させられる1曲。電気グルーヴの肝はピエール瀧なんだなぁと、この曲を聞くといつも思います。
作詞・作曲
作詞・作曲:電気グルーヴ
再生時間
9分30秒
2.ポポ(DUBBING YOU MIX)
フジテレビ系列の教育番組「ポンキッキ」でも採用されていた歌もの。このアレンジはポンキッキーズ版と比較すると淡々とした、ソリッドな印象を受けます。
歌詞はSLからの情景について淡々と書いていますが、ネットで見ていると「実はLSDをモチーフに、、、」といった言説もあるようです。しかしそのソースが見つからなかったので、信憑性は低そうです。私はあんまり細かいこと考えずに、SLみたいに力強く思った道を突き進め、というエールの曲なのではないかと思っています。
元々のアレンジもかなりアシッド感強めのテクノポップで、よく子供向けにこんな曲提供したなぁと常々思っています。ましてやLSDモチーフだったら尚更です。
私も当時ポンキッキでこの曲を聴いていて、面白い曲があるという程度に認識していましたが、今聴くとかなり攻めてるますね。当時のポンキッキは電気グルーヴはじめかなり攻めた楽曲選定をしてるので、ベストアルバムがとてもオススメです。1発目からスチャダラパーですし。
作詞・作曲
作詞:石野卓球・ピエール瀧、作曲:石野卓球
再生時間
5分41秒
3.バロン・ダンス
民族楽器のサンプリングから始まり、民族的なフレーズとジャーマンテクノのサウンドが折り重なった印象的な1曲。今でもクラブで流れていてもあまり違和感はないかなと思います。
ちなみに、バロンとは、男爵(Baron)ではなく、バリの聖獣のバロン(Barong)のことらしいです。ゲームの女神転生シリーズをプレイした方は、使い魔として「バロン」の名前を目にしたこともあるかと思います。
このバロンと、悪を司る魔女ランダが永遠に戦いを続けているという神話があるそうです。
災いから人々を守るという趣旨でお祭りで奉納されていたダンスがバロン・ダンスと呼ばれており、イントロの民族楽器のサンプリングはここに由来しているようです。
以下はバロンの参考動画です。
作詞・作曲
作曲:石野卓球
再生時間
7分35秒
4.カメライフ
サボりがちな人の歌、というよりは「頑張れ頑張れ」と言ってくる人たちへ対して曲なのかなと思います。
がんばるがんばるなんてやめちゃえ
コーラスで頑張れ頑張れと言ってるのは皮肉でしょうね。
皮肉にまみれた曲がシングルカットされ、かつ頑張ってる人が沢山いそうなTV番組とタイアップしたりして、皮肉のエッジがどんどん鋭くなっていきます。
作詞・作曲
作詞・作曲:石野卓球
再生時間
5分19秒
5.ザ マーブル メン
おふざけ気味だった前曲から一転してテクノモード。
後年の砂原良徳ソロにも見られる緻密な音の配置も、この曲で感じることができるかと思います。非常に真摯なテクノという印象。
作詞・作曲
作曲:砂原良徳
再生時間
4分22秒
6.お正月
再びおふざけモード。作詞作曲ボーカルすべて、ピエール瀧。とてもキャッチーで盛り上がりやすい曲だと思います。
歌詞の最後に、
なにがなんだかもう さっぱり訳がわからない
とか言ってるのが、この曲すべてを表しているのではないでしょうか。
アルバム「VITAMIN」収録の「富士山」も作詞作曲ボーカルすべてピエール瀧ですが、ピエール瀧はキャッチーなメロディを作る才能に溢れてるんだなぁと思います。
この曲のライヴ映像も残っており、お正月の仮装をしたピエール瀧が空を飛んでいる様子を見ることができます。
作詞・作曲
作詞・作曲:ピエール瀧
再生時間
4分22秒
7.カメレオン・マニア
「ザ マーブル メン」と同じく砂原良徳によるトラック。
この音の整理整頓され尽くした緻密な音配置・トラック構成は、現在リマスタリング・エンジニアとしても活躍する彼の実力の一端を垣間見ることができるのではないでしょうか。
作詞・作曲
作曲:砂原良徳
再生時間
4分22秒
8.ノイ・ノイ・ノイ
歌もの、、、ではあるが、架空の言語で歌い上げるため区分が微妙なところ。
一応「民謡」である体だが、トラックは思いっきり電気グルーヴ。
ちなみに別アレンジが存在しており、個人的にはそちらのほうが好き。テレビ出演でも違うアレンジでやったとのこと。特に意味のない言葉の羅列の曲をテレビで放映するってすごい、、、
作詞・作曲
作詞:ピエール瀧、作曲:砂原良徳
再生時間
5分19秒
9.ブラジルのカウボーイ
少しずつドラムの音を重ねていき、そのドラムの音が整うと複数のシーケンサーが暴れ狂い、色んなループが出たり消えたりするという伝統的なアゲ方をしてくる1曲。こういうアゲ方(・∀・)イイ!!
前2曲が砂原良徳による緻密さが強いトラックだったこともあり、石野卓球トラックで特徴的なダンサブルさが特に色濃く印象付けられます。
作詞・作曲
作曲:石野卓球
再生時間
7分28秒
10.虹
電気グルーヴの代表曲のひとつ。
テレビアニメ「交響戦士エウレカセブン」でもこの曲がフィーチャーされたシーンがあり、そこから電気グルーヴを知ったという若年層も相当数いるようです。
Amazonのレビューを見てみると、この曲に対する言及がめちゃくちゃ多く、いかに有名な曲化が伺いしれます。。
作詞・作曲
作詞・作曲:石野卓球
再生時間
10分53秒
まとめ
前作VITAMINに続き、とてもまとまっているアルバムだと思います。ただ、爆発的なトラックや起伏があったりする訳ではないので、全体的に見ると地味な印象を受けてしまうかな〜と思います。
ただ、ある一定のテンションを保って最後まで聴けるという意味で、長時間のリスニングにはとても優れています。トラックの完成度は前作にもまして高まっており、特にインスト曲は今クラブで流しても遜色ないレベルに達しているかと思います。
シングルカットが多く曲単品に切り分けても楽しめ、アルバム全体でみても高水準のクオリティ、という意味でトータルバランスに優れているので、とてもオススメです!