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AC/DC全アルバムまとめ(その3・The Razors Edge〜Rock Or Bust)【1990年〜2014年】

AC/DCロゴ

AC/DCのアルバムを全部まとめてみた記事の第3段です。

今回は1990年代〜2010年代編です。

80年代後半のAC/DC暗黒期からの大復活を印象付けた『The Razors Edge』から、執筆時点の最新作『Rock or Bust』までの5作を紹介します。

1970年代編はこちら。1980年代編はこちら

The Razors Edge(1990年)

前作『Blow Up Your Video』によるヒットでセルフプロデュース時代の所謂「暗黒期」からの脱出の足がかりを作り、そこから2年のインターバルでリリースされた『The Razors Edge』。このアルバムでAC/DCは完全復活を果たします。

日本でも色んな場面で耳にするキラーチューン「Thunderstruck」を皮切りに、印象的でキャッチーなリフで構成された楽曲が並びます。

個人的に好きな楽曲は、3曲目の「Moneytalk」。タイトル通り金の話しかしない歌詞と、キャッチーなリフとメロディー、PVもアンガス紙幣が空から降ってくるというバカバカしさがとても気に入っています。

かなりキャッチーな曲揃いではありますが、どれもロックンロールがしっかり基底にあり、AC/DCらしさに溢れているのがスゴイ所ですね。ほんとにブレない。

この『The Razors Edge』では、プロデューサーにAerosmithの「Permanent Vacation」やBon Joviの「Slippery When Wet(邦題:ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」の製作に携わったブルース・フェアバーンを迎えています。

「Permanent Vacation」といい「Slippy When Wet」といい、どちらも非常にキャッチーな楽曲が揃っており、これを考慮するとAC/DCのハードさを損なわないまま楽曲のキャッチーさに磨きをかけることができたのは、ブルース・フェアバーンの手腕によるものかもしれません。

余談ですが、『The Razors Edge』に参加しているドラマーのクリス・スレイド、個人的にとてもお気に入りのドラマーです。

スキンヘッドのいかついスタイルで、いかにもなパワー感全開な上、右のオープンハンドにドラムセットの両脇にバスドラムを2台配置するという独特のプレイスタイルがとても印象的です。

テンポは若干走り気味ですが、とてもパワフルでAC/DCにはピッタリのプレイスタイルだと思っています。

ライヴDVDの『Live at Donington』で、実際の彼のプレイを見ることができます。

現時点でのアルバムへの参加はこの『The Razors Edge』のみですが、フィル・ラッド脱退後の2014年から再度AC/DCに加入しライヴに帯同しており、今後新作をリリースする際はクリス・スレイドの音が入るのではないかと思っており、とても楽しみだったりします。

90年代以降のアルバムでおすすめするのであれば、この『The Razors Edge』でしょうね。AC/DC初心者にも入門用としてオススメしやすく、特にロックンロールに馴染みの方ならリピート必須です。

Ballbreaker(1995年)

『The Razors Edge』から実に5年のインターバルを置いて発表されたのが『Ballbreaker』。

デビュー期からAC/DCを支えたドラマー、フィル・ラッドが復帰し、それによりメガヒットアルバム『Back in Black』製作時の黄金期と同じメンバー体制となりました。

また、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやスレイヤーを始めとした数々のアーティストのプロデュースで有名なリック・ルービンが起用されています。

そんな『Ballbreaker』ですが、ハッキリ言ってしまうと、全体的に地味なアルバムです。

キャッチーで爆発力のある楽曲が盛りだくさんだった前作『The Razors Edge』とは打って変わってミドルテンポで落ち着いた楽曲が並び、人によっては若干トーンダウンした印象を受けることと思います。

これは発表当時の時代の影響もあったのか、どことなくグランジやオルタナっぽい要素が入り込んでしまったせいなのではないかと考えています。どことなく影が落ちている、そんな感じで、AC/DCらしい突き抜ける感じがイマイチしないのです。

特にリードトラックでもある「Hard As A Rock」がそんな印象を受けます。

PVはお客さんがノリノリの激アツライヴの映像と、どこか明るくなりきれない楽曲が合わさってどこかぎこちないなぁと思ってしまっていまいました。

明るくなりきれないとか言ってしまいましたが、「Hard As A Rock」はライヴ映像で観てみるとドライヴ感も出てノれるカッコいい曲に変貌します。

以下の動画がライヴ版です。やはりAC/DCはちょっと走ってるくらいがちょうどいいのだなと思います。

個人的に好きな楽曲は、アルバムタイトルトラックである『Ballbreaker』。

ライヴでは大きな鉄球に乗っかったブライアン・ジョンソンが歌い上げます。

疾走感溢れるリフがカッコいい!!!

前述の「Hard As A Rock」を見ても、ヒットメーカーとしても知られるリック・ルービンですが、AC/DCと相性はよくなかったのではないかなと思っています。

ただ、上記の通り「グランジっぽいロックンロール」なので、やっている事自体はロックンロールでいつものAC/DCと対して変わらないのです。カッコいいのです。ただ、仕上がりが地味になってしまっているというだけなのです…。

地味とはいえ、これまで以上に円熟味を増した楽曲が揃ったアルバムなので、是非聴いてみて下さい。

Stiff Upper Lip(2000年)

前作『Ballbreaker』から5年、待望の中リリースされたアルバムが『Stiff Upper Lip』です。

『Highway To Hell』以前はハリー・ヴァンダとの連名でプロデュースを務めていたジョージ・ヤングがプロデューサーとして関わった事もあってか、『Ballbreaker』での地味さが払拭され、AC/DCの本領であるロックンロールとブルースを純粋に突き詰めたアルバムだと思っています。

タイトルトラックでありリードトラックでもある「Stiff Upper Lip」の2本のギターの絡み合いは非常に印象的で、以前の作品のような荒々しさは控えめになりつつも相変わらずのグルーヴ感と明るさを持ち合わせたベテランの風格を見せつけています。

ライヴになると疾走感が大幅に増幅されるのは、いつも通りです。超かっこいい。「俺たち超イカしてる」感全開なところが最高。

個人的にはSatellite Bluesがとても好きで。こんなにシンプルなリフで爆発力の高い楽曲を40年近く作り続けることのできるAC/DCは本当にスゴイと思います。

AC/DCの原点であるブルース・ロックやガレージ・ロックに回帰し、円熟味が加わった結果生まれた名盤だと思います。必聴です!

Black Ice(2008年)

『Stiff Upper Lip』から実に8年(!)!ファンを待たせに待たせてリリースされたのが、この『Black Ice』。

リード曲「Rock N Roll Train」の、「そうそうこれこれ!待ってた!」感。8年経とうが本当に何も変わらないんです。

ライヴ版なんて、会場全体で大合唱しています。映ってる人達、みんなニコニコ。

AC/DCの魅力が全部詰まっている映像と言ってもいいかもしれません。

タイトルトラックの「Black Ice」も、深くえぐりこむようなザクザクとしたリフが超かっこよく、ブルージーなフレーズをロックに仕上げているAC/DCらしさ溢れる楽曲です。。

全体的にブルース要素も強まっており、AC/DCの好きな事を徹底的に詰め込んでいる印象がするアルバムです。

たまたまこの『Black Ice』が発表された時のツアーを見に行くことができ、『Back in Black』時と同じ編成の黄金期メンバーでのライヴを日本で直接目の当たりにできた事は本当に幸せでした。

当時メンバーは既に50代半ば〜60代を迎えており、次また同じメンバーで近い内に来日してくれたらいいなと思っていましたが、それは実現せずじまいでした。詳細は後述。

Rock Or Bust(2014年)

『Black Ice』から6年、2010年代となって初めてリリースされたのが『Rock Or Bust』です。

『Rock Or Bust』での最大の出来事は、長年バンドをまとめ続けてきたリズムギターのマルコム・ヤングが不在である点です。認知症を発症し、バンドから離脱してしまったとのこと。

安定したバッキングと作曲面での貢献も大きかったマルコムが不在で果たしてどうなるのかととても心配していましたが、余計な心配は不要でした。いつものAC/DCでした。

『Rock or Bust』とリリース時期が近い作品群と比較してもスピード感溢れる楽曲が並んでおり、非常に聴きやすいアルバムです。

個人的には『Play Ball』のPVがお気に入りです。2010年代も半ばになっているのにこのCG合成。楽曲もとてもキャッチーなんですよね。どことなくアルバム『The Razors Edge』を想起させます。

マルコム・ヤングの代わりにリズムギターとして加入したのが、甥のスティーヴィー・ヤング。過去『Blow Up Your Video』リリース時に行われていたライヴツアーにて、マルコム・ヤングの代打でステージに上っていた事でも知られています。硬質なリフはスティーヴィーに引き継がれ、AC/DCとしての音を保ち続けています。

ファーストアルバム『High Voltage』から実に38年、変わらぬ活かした音を奏で続けています。聴きやすさも相まって今のAC/DCを知る上でも、『Rock Or Bust』は非常におすすめです。

まとめ

ということで、今回は『The Razors Edge』から最新アルバム『Rock Or Bust』までまとめてみました。

やっぱり全体的にオススメです。ここまで徹底して一つの音楽性を突き詰めたバンドも、なかなかないのではないでしょうか。

ただ、1970年代、1980年代は1〜2年に1枚というハイペースで新作をリリースしていたAC/DCですが、1990年に入ってから新作リリースの間がどんどん空いてきており、次はいつ新作がリリースされるかよくわからない状態です。

それに加え、『Rock or Bust』のリリース後、体制にも大きな変化がありました。

マルコム・ヤングの死去、暗殺計画を立てたらしいドラムのフィル・ラッドの解雇、長年の大音量ライヴで耳に深刻なダメージを受けたブライアン・ジョンソンのライヴ活動ストップ(その後復帰)、度重なるメンバーチェンジに気力を失ってしまったベースのクリフ・ウィリアムズの引退…。『Back in Black』以降の体制が大きく崩れてしまいました。

当記事執筆時点では、マルコムが抜けた『Rock or Bust』が最新作ですが、そこから上記の通り大きくメンバーの状態が変わってしまったので、次の作品がリリースされる時のイメージが正直全く湧きません。

それでも、これまでの膨大な作品から見ても、AC/DCはDNAレベルで刻み込まれているロックンロールをこの先もずっと奏で続けてくれるだろうと、信じています。

それでは!

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もいもい
多趣味なリーマン。音楽・ゲーム・旅行等を中心に、興味を持った事柄について取り上げていきます。