「アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法」(著:平木典子)を読みましたので、その感想です。
はじめに
皆さんは、対人関係で何かしら課題感を覚えたことはありませんか?
親友・仕事関係・恋人等、誰かと関わりながら日々の生活を営まれている事と思いますが、その関わりの中で好きな人もいれば嫌いな人もいて、悩みを抱える方も多いのではないのでしょうか。
アドラー心理学でも「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」と言い切っているように、誰かとの関係性というものは我々を悩ませる大きな原因です。
私も例に漏れず、対人関係での悩みを抱える1人です。自分の意見をしっかり伝えられず押し黙ってしまったり、逆に余計な事を言ってしまって気まずくなってしまったりと、コミュニケーション能力が低いという自覚がありました。特に今、営業という立場にいる都合上、初対面の方との接触が非常に多いので、悩みは日々増加傾向にあります。
そんな中、対人コミュニケーションについて調べている中で「アサーション」という概念がある事を知り、今回の本を手に取りました。
本の概要およびアサーションについて
今回読んだ本は、「アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法」。講談社の現代新書シリーズからの刊行です。
そでに記載のプロフィールによると、著者の平木典子さんは臨床心理士さんであり、長年対人コミュニケーションについてのトレーニングに従事されてきたとのこと。
「アサーション入門」以外に出版されている平木典子さんの著作物を見てみると、やはりコミュニケーションの悩みを解決する趣旨の著作が多く、平木さんの著作はコミュニケーションについて課題感を覚えている人には最適なものになるのではないかと思います。
感想
というわけで、以下が感想です。
アサーションとは「自分も相手も大切にする自己表現法」
アサーションとは、「自分も相手も大切にする自己表現法」のことです。
当書のサブタイトルのままですが、これが一番しっくり来る言い回しだと思います。
「アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法」では、自己表現は大きく3パターンに分けられると説きます。
- 非主張的自己表現
- 攻撃的自己表現
- アサーティブ
それぞれ、自他の大切にされ具合を分けると、以下のような形になります。
- 非主張的自己表現→自分×、他人○(自分を押さえつけ、他人の顔色を伺っている状態)
- 攻撃的自己表現→自分○、他人×(他人を押さえつけ、我を通そうとしている状態)
- アサーティブ→自分○、他人○(双方の存在が尊重される、理想的な状態)
「アサーティブ」なやり取りについて、本文中に以下の文言があります。
このやり取り(アサーティブなやり取り)は、「相手の存在を認め、相手を自分のように大切にしようとする」という思いの表現なのです。
※上記引用部()内は補足として私が追記しました。
自分のことを大切にしようとするのは当然です。一方で相手(他人)も同様に、自身の事を大切に考えています。皆それぞれが、かけがえのない大切な人達なのです。
そんな状態なのに、自分のことを押さえつけたり(非主張的自己表現)、相手の事を押さえつけたり(攻撃的自己表現)してしまうと、対人関係が上手くいかなくなる事は目に見えますよね。
「自他どちらかを大切に」ではなく、「自他どちらも大切に」という前提で自己表現を行っていくのが「アサーティブ」という訳です。
素晴らしいコンセプトだと思いませんか? 私はとても気に入りました。
私の悩みも、非主張的自己表現(自分の意見をしっかり伝えられず押し黙る)と、攻撃的自己表現(余計な事を言ってしまって気まずくなってしまう)の区分にぴったりハマります。
書籍の中に上記3パターンのうち、自分がどれに当てはまるか導き出すアンケートがあり、私の場合、非主張的自己表現が8割、攻撃的自己表現が2割という結果になりました。
つまりは「自分か相手、どちらの言うことしか聞かない」という割と両極端な志向があるという事が分かりました。それは人間関係で悩んでしてしまうのも当然だと気づけましたね…。
アサーションのやり方。素直になるべし!
非常に簡単です。
- 相手の意見を真正面から受け止める
- 正しく言語化する
何にしても「素直であること」が重要だなと思いました。
心を
対人関係の一般常識は、一度疑ってみる
アサーティブな対人関係を実現する上で、「自分にブレーキをかけてしまう」事が大きな壁になるようです。
というのも、アサーティブな対人関係では、自分の胸の内を正直に言語化する必要があるのですが、これまで育まれてきた色んな考え方が邪魔をしてくる場合があるとのこと。
本の中では、一例として失敗恐怖について、特に「過ちや失敗をしたら、責められるのは当然だ」という考え方を取り上げています。(ちなみに、私が対人関係が苦手な理由の1つです)
アサーティブな考え方だと、「過ちや失敗をしたら、叱られることはあり得る」と考えるということだそう。そう、アサーティブな考え方になると、責める側の姿勢も異なるわけです。
どういうことかと言うと、ただ責め立てるだけというのは上記の3つのパターンで言うところの攻撃的自己表現であり、失敗した側が萎縮してしまい非主張的自己表現に走るか、逆上して攻撃的自己表現に走ってしまい、互いを傷つけ合うだけになりかねません。
では、アサーティブなやり取りはどうか?以下のイメージです。
- 迷惑かけられた側→「今の感情+今後どうしたらいいか」という前向きな提案が含まれた「叱り」を迷惑かけた側に伝える
- 迷惑かけた側→迷惑かけられた側の叱りを受けて、失敗した側は自分がやってしまった事を正面から受け止め、自分ができる限りの償いをする
アサーティブな考え方は建設的ですよね。お互い未来志向です。
迷惑をかけた側に立った場合、必ずしも迷惑かけられた側がアサーティブであるとは限りませんが、相手の思いを正面から受け止め、自分ができる限りの償いをするよう努める事でアサーティブであることができます。
勿論、必ずしもを満足させるレベルで償えるかはわかりません。でも、未来を向いてベストを尽くしている訳ですから、非主張的や攻撃的な表現を行うよりも、精神的な負担は少ないことでしょう。
こういった形で、いま対人関係が上手くいかないと自覚している方のアサーション実行に対するブレーキを解きほぐしてくれるセクションも豊富に含まれており、目からウロコがボロボロ落ちました。固定概念って、恐ろしい…。
自身が、アサーティブであるべし!
アサーションは、「他人を思い通りに動かす」という類のメソッドではありません。
あくまでアサーションは、相手からの働き方に対する受け止め方であり返答する際の心構えみたいなものです。
そのため、アサーションの実行は、自分で行うしかありません。
相手が必ずしもアサーティブであるとも限らず、非主張的自己表現や攻撃的自己表現を向けてくる可能性だって大いにあります。また、一発で自身の考え方が伝わるわけでもありません。これらが、アサーションを実行していく上で大変なポイントです。
しかし、自身がアサーティブな姿勢を崩さずにいることで、気が軽くなることは確かだろうなと思います。相手を尊重して理解し合おうとベストを尽くす訳ですし、場合によっては相手もアサーティブになる
相手がどうであれ、自身はアサーティブであり続ける。これが、アサーション成功へ向けた唯一の成功法則かと思いました。
まとめ
「アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法」の感想でした。
アサーションは自他ともに心地よく生活を営むことができるようになる素晴らしい考え方だと思いました。今の対人関係の悩みも、大きく改善されそうです。
全部で170ページくらいと手頃なボリューム感で読みやすい文体で書かれているため、タイトルの通り入門用の書籍としてとても適切だと感じました。具体例も多く掲載しており、実行に移す際のイメージが湧きやすかったです。
私もアサーションの考え方を取り入れながら、日々過ごしていければと思います。
みんなで幸せになろうよ by 後藤隊長(機動警察パトレイバーの登場人物)
それでは!